研究概要 |
可変密度の標本化を行うシステムにおいては,標本化によって生じる空間的なひずみと量子化によって生じる振幅的なひずみの間のトレード・オフをどのように調整するかが方式設計上の大きな問題となる.また,本方式のように適応的な標本化を伴う再帰的な符号化ループの中に量子化器が組み込まれている場合,量子化器の特性が標本化の特性に大きく影響を及ぼすため,標本化と量子化の特性をそれぞれ独立に最適化することができないという問題がある.本研究では,本グループが従来から検討してきている可変密度標本化手法を採用し,圧伸モデルに基づく汎用的なベクトル量子化手法を符号化ループの中で用いることでこの問題を解決した.本研究の成果を以下に要約して述べる.(1)標本化比率および量子化ビット数の様々な組合せについて実際に再生画像を作成し,これを用いて主観評価実験を行なうことにより,可変密度標本化された画像に対する主観評価上の再生画質と客観評価尺度としてのSN比との間によい一致が見られることを示した.(2)さらに,SN比と標本化比率,SN比と量子化ビット数,およびこれらの相互関係を詳細に検討した結果,比較的SN比の高い領域においては量子化によるひずみと標本化によるひずみの総和を最小化する符号化手法が有効であることを明らかにした.(3)標本化によるひずみと量子化によるひずみとを適応的に制御する符号化方式として,区分的双一次パッチのベクトル量子化基づく画像データ圧縮方式,および再帰的ベクトル量子化方式を開発した.これらの方式においては,標本化比率は画像信号の局所的な性質に追従させて適応的に制御される.(4)上記の方式のために,圧伸モデルに基づくベクトル量子化器の設計手法を開発した.(5)ベクトル量子化の高速符号化アルゴリズムを開発した.
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