研究概要 |
スペクトル拡散通信の拡散系列としてシステム内の各ユ-ザに異なる系列を割当て,同時に多数のユ-ザが同一の周波数帯を共用して通信を行うスペクトル拡散多元接続(SSMA)方式においては,システム内の他のユ-ザの送信波(以下、干渉波という)が,システムの受信特性に種々の影響を与える。特に同期追跡系においては干渉波の存在により残留位相誤差を生じ,結果的に処理利得の劣化を生じる。 通常,同期追跡系としては,遅延同期ル-プ(DLL)を用いることが多い。干渉波が存在しない場合はDLLの位相比較特性(S曲線)は,位相誤差がOの点で誤差電圧がOとなり,残留誤差もOとなる。ところが,多元接続時には干渉波が存在するため残留位相誤差が生じる。そこで,本研究では,これを零にすることが出来る二重遅延同期ル-プ(Dual DLL)を提案した。この回路には2つの同期ル-プが含まれており,一方で残留位相誤差を検出し,他方でこれを零とするものである。この回路について以下の項目について研究を行った. (1)本回路の等価モデルを導出し,このモデルをもとに,同期引き込み特性,雑音特性および平均同期はずれ時間特性についての理論解析を行うとともに,計算機シミュレ-ションを行い,理論解析の確認を行った。以上の結果は別項の研究発表の欄に示すように電子情報通信学会論文誌に発表を行った. (2)本方式の実験回路を試作し,上記特性の一部についての測定を行った。さらに,残留位相誤差は等価的に位相変調成分と見なすことが出来るので,設備備品として購入したモジュレ-ションアナライザを用いて,位相変調特性を測定することにより,上記特性の測定をまもなく終了する予定である。
|