研究概要 |
1.合成音声の品質評価法の枠組みとして、(ア)了解性、(イ)自然性、(ウ)利用条件(利用目的・利用者・利用環境)との適合性、3つの評価項目に分類整理した。 2.了解性評価のガイドラインの作成を目的にして、実験的検討を行った。その結果、以下のことが明らかになった。(1)従来広く用いられてきた単音節了解度試験法だけでは不十分であり、連音節了解度試験法が基本的な評価法となるべきであることを実験的に示した。(2)単語了解度試験法としては、従来日本で広く用いられてきた孤立単語呈示よりはHaskins研究所で開発された合文法無意味文(変則文)による評価法が優れていることを示した。また、変則文による試験手順についても種々比較検討し、適切な手順について明らかにした。 3.自然性の評価については、検討が余り進まなかったが、一般人による評価に加えて、音声学的訓練を受けた被験者による試験法の重要性を確認した。それは、自然性の評価の基本は合成音声における「音声学的現象の実現の程度」の(主観的)測定だからである。 4.利用条件との適合性について、特に合成音声の声質と適合性の関係について実験的に検討した。声質を決める要因として、(ア)平均基本周波数、(イ)平均スペクトル傾斜、を取り上げた。利用目的として、(ア)校正などの長時間利用、(イ)各種情報サービス等の短時間利用、利用者として(ア)成人男性と(イ)成人女性,利用環境として,(ア)通常オフィス(背景騒音レベル50 dBA)と(イ)静かな部屋(背景騒音レベル20 dBA),を実験因子とした。以下のことが明らかになった。(1)利用者の性別の違いは適合性を評価する上で、重要な因子ではない(性別による有意差はない)。(2)利用環境の違いによって、それぞれ環境に適した合成音声の平均スペクトル傾斜が有意に変化する。(3)長時間利用か短時間利用かによって、適切な平均基本周波数が有意に異なる。 以上,3つの枠組みに基づいた合成技術の評価法について実験的に検討し、人間の知覚心理的特性を考慮した評価の必要性と、その具体的な評価のガイドラインについて示した。
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