研究概要 |
a-SiN:H/a-Si:Hヘテロ接合を有するp-i-nセルにおいて,量子効率1を大きく上回る,光電流の増倍現象を観測した。また,光電流の増倍機構について考察した結果,ヘテロ接合界面へのホールの蓄積,内部電界変調を経て,a-SiN:H層の局在準位を介してキャリアがトンネリングすることによって増倍電流が発生することを明らかにした。すなわち,研究当初に期待したアバランシェ機構は現段階ではその存在が否定されたことになる。上述のトンネリング注入機構モデルに基づいて,素子構造の最適化を行なった結果,a-SiN:H(Eo=2.leV,dn=40nm)/a-Si:H(Eo=1.8eV, ds=1μm)ヘテロ接合セルにおいて,光電流増倍率>70(25V),応答時間<600μsecが得られた。実用上の観点から言えば,S/N比は向上するものの,増倍機構の性格上,応答時間が比較的遅いという本質的な問題も残っている。一方,この光検出器と発光素子を組み合わせた光複合素子への応用についても,予備的な試作実験を開始した。いまだ,系統的な実験結果はまだ得られていないが,これらの研究を通じてアモルファス材料の新しいデバイス応用分野が切り開かれていくことを期待したい。
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