研究概要 |
本研究は,筆者の考案によるプッシュプル方式のパラメトリック変圧器を利用した簡易高性能な電源装置の開発を目的として行なったものである。以下に本研究で得られた成果を記述する。 先ず,500W程度のプッシュプルパラメトリック変圧器を構成し,その動作機構の理論的解明ならびに実験を行なった。負荷として通常の線形負荷のほかに,ダイオ-ドやサイリスタ整流回路など種々の非線形負荷に対する動作特性について詳細な検討を行なった。その結果,線形あるいは非線負荷にかかららず本変圧器の入力電流は大略正弦波であり,入力力率も95%以上と高い値を示すこと,したがって本変圧器を用いれば,歪負荷電流の補償機能を有し,更にパラメトリック変圧器が本来有する線間電圧調整,過負荷保護,ノイズフィルタ特性を具備する高機能電源が実現可能であることが明らかになった。ついで,このような電源の設計手法について検討を行なった。すなわち,プッシュプルパラメトリック変圧器は基本的には直交磁心とダイオ-ドで構成されるため,設計においては,磁気デバイスと半導体デバイス双方の非線形特性を考慮した精度の高い解析を要求される。本研究においては,汎用の回路シミュレ-ションプログラムであるSPICEに適用するための直交磁心の数値計算モデルを考案し,プッシュプルパラメトリック変圧器の非線形負荷時の特性算定を行なった。算定結果と実測結果は極めて良好な一致を示し,本算定手法の妥当性を明らかにすることができた。 以上より,プッシュプルパラメトリック変圧器は,種々の非線形負荷から発生する高調波電力の除去機能を有する電源装置として有用であることが実証されるとともに,最適設計のための基礎的手法が確立され,本研究の所期の目的が一応達成されたものと考えられる。以上の成果は日本応用磁気学会誌に掲載予定である。
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