研究概要 |
本研究は視覚情報処理における色情報の役割を明らかにするために,神経細胞の色選択性及び色受容野特性の関係を情報理論的立場から考察し,従来の神経生理学的知見と比較,検討することを目的とするものである。 先ず,視覚神経系における色情報表現を調べるために,1569枚のマンセル色票分光反射率を5層ニュ-ラルネットにより解析した結果,色の物理量から心理量への変換がバックプロパゲ-ション学習により獲得されることを示した。 さらに,拡張Hebb型学習側に従う自己組織化神経神経回路モデルを用いて,空間特性を考慮した色受容野の解析を行った。学習デ-タには,我々の日常視環境の特徴,すなわち,空間的な相関及び色相関の2種類の統計量で定量化されるランダムカラ-ノイズ画像を用いた。形成された色受容野は輝度及び反対色に対し選択性を示し,さらに,空間的に一様なものと,いわゆるBarー,Edgeーdetector的な空間拮抗特性を示す受容野が形成された。これらは視覚大脳皮質における二重対立型受容野に対応するものと考えられる。自己組織的形成された受容野は情報損失が最小となるように設計されたものであり,これらは視覚大脳皮質に存在する色受容野に定性的に一致することが分かった。 これらの結果は,視覚大脳皮質における色情報処理メカニズムの最適性を示唆するものと考えられる。
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