研究概要 |
1. 最適サーボ問題を取り上げて,モデルと制御性能との連続依存性に関する検討を行った。その主な成果は,グラフ位相がモデリングにおいて本質的なことを明確にした点である。この結果は,従来の最適レギュレータ問題について知られていた結果を補強するものである。 2. プロパー安定な有理伝達関数の近似度合の計量としてのH∞ノルムとH2ノルムをとりあげ,そのシステム・制御工学的な差異について検討した。 対象をアクティブ・ノイズ・コントロール問題に限定し,ノルムの違いが制御性能にどの様に反映されるかを調べた。得られた結果によると, 注目する周波数帯域だけを取り出す窓関数の特性が理想的であれば, 対象帯域での制御性能に差がないことが明らかになった。 3. 任意に与えられた安定有理関数を,勝手に指定した極をもつ有理関数でグラフ位相(ギャップ距離)の意味で任意の精度で近似できること,そして, その誤差評価式を明らかにした。 この結果は, 時間遅れの有理関数近似に重要な働きをするものと期待できる。 4. アクティブノイズコントロール問題を実用化するには,時間遅れ関数の有理伝達関数近似問題という限定された問題を解く必要がある。 この問題について,制御性能評価と誤差評価式が同時に得られるよう, パデー近似の考えを導入した近似方法を考察しており, 次数の見積を得る簡便な方法を導くことができた。 この結果は公表すべく準備中である。 5. モデル低次元化問題を時間-周波数的な立場から,新規に定式化を行った。従来の低次元化問題で困難なことは,早い現象と遅い現象が混在した応答の取扱である。 これに対して, 時間-周波数的な考えが有効になるものと思われ, ウェーブレット変換を用いたモデル低次元化を試みた。 新規な考え方でモデル低次元化問題が取り扱えるので,今後一層研究を進めてみたいと思っている。
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