研究概要 |
本研究では,本確定な外乱あるいはモデル化誤差に対して頑健な制御(ロバスト制御)の時間領域における新しい構成法を提案し,得られた制御の性能と限界を理論的に考察した。制御の構成と外乱あるいはモデル化誤差の想定を利害の対立する微分ゲ-ムとみなし,そのゲ-ムの解を構成することによりロバスト制御を得ることができる。Hー無限大制御はこのようなアプロ-チにより得られるロバスト制御の典型的なものであり,このことが一方ではHー無限大制御の能性を保守的なものとしてしまう要因でもあった。本研究では,Hー無限大制御の優れたロバスト性にLQ制御の優れた応答性を加えた制御を実現することにより,Hー無限大制御の保守性を克服することをねらいとした。 Hー無限大制御は利害の対立する外乱あるいはモデル誤差として最悪なものを想定している。そこで,外乱あるいはモデル化誤差の能力を制御系設計の立場からみて合理的な制限を加えた新たな微分ゲ-ムを考え,これを解くことにより新しい制御(混合型H^2/H^∝制御)を構成した。この制御は,原微分ゲ-ムに対しては非零和解であり,原微分ゲ-ムの零和解すなわちHー無限大制御と比較すると,H^2タイプのコストに関して優れた制御となっている。H^2タイプのコストは制御系の渦度応答の評価に適しており,その意味で混合型H^2/H^∝制御は所期の目的を達成している。外乱あるいはモデル化誤差の能力の制限として,2通りの方法を導入した。第一の方法は,外乱を任意に想定できる部分と白色ノイズの和として表現するもので,第二の方法は,制御性能の評価を,任意に想定できる外乱に対するものと白色ノイズに対するものに分け,前者ではH^∝制御としての評価を,後者ではH^2制御としての評価をおこなうものである。本アプロ-チは純粋に時間領域におけるものであり,定式化は時変系にも適用できる形式となっている。
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