研究概要 |
設計の作業を大きく分類すると,安全率あるいは信頼性指標を決定する段階と,定められた安全率を満足するように部材の寸法や材料を決定する段階に分けられる。この内,第一段階は,過去に蓄積された事故等の統計や社会的,経済的影響等に基づき,設計基準として定められている場合が多いが,合理的に安全率や信頼性指標を決定するために重要な要素は,作用荷重や部材強度の統計的バラツキを考慮した強度評価と経済性や機能性等の定量的評価の二つであり,これを兼ね備えた手法のひとつが信頼性評価に基づく最適設計である。 一般に,構造物の強度的限界の捉え方には,幅があり,初期破損を限界とするか,あるいはメカニズムを形成し崩壊する状態を限界とするかによって最適な構造物の形態は異なる。さらに,最終強度を限界とする場合においては,崩壊によって生じる被害の大きさが崩壊モード毎に異なると予想される。 そこで,平成3年度は部材信頼性指標βIiに対応した量として,崩壊モード別信頼性指標βUiを導入し,最終強度を限界状態とした場合に対するトラス構造の最適化手法を開発した。さらに,確率論的最適設計と確定論的最適設計,また,許容応力設計と最終強度設計の比較を通して,それぞれの特徴と意義を検討した。 また,平成4年度では,大規模構造物の最適化手法として,学習的アルゴリズムに基づくモンテカルロ法を提案し,その効率化のために,構造物を複数の階層に分けて最適化を行う方法を開発した。
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