研究概要 |
本研究では,ニューラルネットワークを用いて橋梁構造物の景観評価に関する研究を行った。対象とした橋種はアーチに限定しているが,ここで開発した評価手法はすべての種類の橋梁に適用できる。実施した研究内容および得られた結果の概要を以下に示す。 1.橋梁美を構成する要素として,「形式美」,「サイコベクトル」,「環境との調和」の3つを取り上げ,各要素を定量化するための評価項目として,以下に示す各項目を考えた。(1)形式美:ライズ比,スレンダネス,補剛材間隔,橋種,橋の形式(2)サイコベクトル:橋梁本体の基本及び補助ベクトル,アーチ部,橋脚,風景の山や川等の各サイコベクトル(3)環境との調和:風景を山岳,湖,湾口,臨港,川の上流,下流,跨道に分けたときの風景内に占める山,水,橋の面績比,橋と風景の色相の色調和関係,明度・彩度の色調和関係 2.橋梁美を点数で評価するために,種々のタイプのアーチ橋の写真を用いて,大学生を対象としてアンケートを実施した。アンケートに際しては,色彩による影響を見るために,カラーとモノクロの2種の写真を用意した。アンケートの結果を100点満点で評価した。 3.上記2.で評価した橋梁美(点数)を出力値(教師値),上記1.で選定した評価項目を入力値として,ニューラルネットワークにより学習させて,アーチ橋の景観評価システムを構築した。このシステムを用いて,橋梁美に影響を及ぼす評価項目の感度解析を行った結果,カラー写真とモノクロ写真では,影響を及ぼす項目がかなり異っており,色彩が橋梁美に及ぼす影響が大きいことがわかった。さらに,ここで構築した評価システムが,実際の橋梁景観設計へどのように適用できるかを,例を挙げて示し,本システムの有効性を明らかにした。
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