研究概要 |
土留壁設置工事中の切土斜面で土砂崩落が生じ,労働者が死亡する事故が多発している。この種の事故は,建設工事中の事故の中でも墜落・交通事故・建設機械事故につぐ多くの事故となっている。この事故の減少を計るために,切取り斜面に簡単な伸縮計を設置して,危険予知を可能ならしめる方法を研究した。 2年間にわたり,長野県下の土木工事現場において,高さ5m以上の切り取り斜面において,斜面の変状について調査した。目視によりいささかでも危険を察知して伸縮計を設置した斜面は,全体の約30%であり,伸縮計に異常が認められたのは6%であった。さらに,1時間4mm以上の移動を示し,避難警報が鳴ったのは2%である。そして実際に人命救助に役立つたのは0.4%である。長野県下だけでもこの種の工事は,市町村道を含めると千か所程度にのぼると見られ,その中で年に一度か二度の事故であることから考えれば,妥当な数値ともみられる。 また,多くの斜面で計測が実施できた結果,単に危険回避だけでなく,工事の進行の上にも役立つ情報が得られることを確認している。目視ではわからない斜面の変状を計測できるので対策も早く立案できる。また,伸縮計の警報のしきい値として,1時間4mmの値で十分対応できることがわかっている。
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