研究概要 |
扇状地扇央付近の土砂堆積が引き起こす流路変遷と多列砂州の形成による流路分岐に関し,既往の砂州波高の予測式と河床変動の線形安定理論を適用してその変化過程が定量的に予測できることを示した。また,そのような勾配急変点での土砂堆積による流路変動過程について,急勾配・緩勾配区間を有する実験装置で実験を行った。緩勾配部に流路が無ければ,急変点上流が低下背水になり,流送能力が増加してその下流に顕著な土砂堆積を見るが,単なる土砂堆積だけでは流路は分岐・変遷しない。一方,有る場合には堰上げ状態になって流路変動が抑制される。 土砂を大量に運ぶ大河川の変動について,バングラデシュのメグナ河やブラマプトラ河の河岸侵食と砂州変化の資料を収集し,網状及び非網状河道における流路変動の相違を検討した。流路変動は流送土砂量の多いブラマプトラ河でとくに活発であり,河岸侵食の激しい区間では砂州の消長も顕著で,土砂堆積が流路変動を継続させている。メグナ河では河岸形状の詳細な検討と洪水流解析から,河岸侵食と河床洗掘の著しい個所が高流速域に一致していることを示した。こうした河岸侵食について,淀川水系宇治川低水路で観測している河岸侵食過程を水理学的・土質力学的に検討し,高さ7mを越える河岸では,すべれ破壊によって土砂が主流部まで運ばれるため侵食が加速され,6mまでの河岸は継続的な斜面の侵食と上部の崩落によって侵食されていくことを見出した。 沖積三角州河川の土砂堆積を伴う平面2次元流路変動について,堆積過程の解明と制御を目的とした実験を遂行し,土砂堆積によって旧流路での水流挙動が制限され,新流路に移行する過程を観察した。ついで,1次元的な河床変動解析とともに,2次元河床変動数値解析を行い,変動機構と制御の可能性を検討した。この数値モデルは実験とよく合ったが,土砂堆積による流路の分岐過程を予測するには至らなかった。
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