研究概要 |
下水消化脱水汚泥に鉄酸化細菌を添加し、汚泥中の重金属の溶出特性を検討した。 実験は消化脱水汚泥(乾燥重量で13g)に硫酸第一鉄(1.47%400ml)と鉄酸細菌懸濁液(岩手県旧松尾鉱山跡新中和処理施設のエアレ-ションタンクから採取し、9K培地で培養したもの)を各々30,20,10,0mlを加え,初期pHを5.0に調整し、25℃、12rpmで回分振とう培養を行い、経日的に、重金属濃度を測定した。その結果次の点が明らかになった。 1)Fe^<2+>濃度はすみやかに低下することから、鉄酸化細菌は汚泥中でも充分に増殖可能である。 2)pHは添加した菌懸濁液の量が多い程短時間で低下し、30ml添加すれば4日間でpHは2.8まで低下した。また、pHの低下量とFe^<2+>の酸化量とは良い相関があった。 3)PbとCrはほとんど溶出せず、菌添加の効果は認められなかった。 4)CuとCdは菌添加量が多い程短時間で溶出し、溶出率は70%以上であった。また、溶出量の経日変化はpHの低下にほぼ対応していた。 5)Ni,Zn,Mnは菌添加により溶出は速くなるがFe^<2+>のみを加えた場合でもかなり溶出したことから、これらの金属は比較的高いpHでも溶出することがわかった。また、ZnとMnの溶出率は80%以上、Niは70%以上であった。 以上より、鉄酸化細菌を消化脱水汚泥に添加することにより、本実験条件の範囲では汚泥中の重金属はPbとCrを除いて70%以上除去できることが明らかになり、汚泥の農地への還元や土壌改良材として利用し得る可能性があることが分った。
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