研究概要 |
地域規模の大気環境に影響を与える要因には,総観気象場,自然地形,地域の土地利用のし方がある。特に,土地利用のし方は人間が改変するものであって,変化が大規模に生ずれば気候や気象を局地的のみならず地域的にも変えるものである。例えば,都市化は,地表の乾燥化に基づく顕熱流束の増加,人工熱源の増加,高層建築物群による流れに対する地表摩擦の増加を通じて,熱,運動量の輪送に影響を与える。これらの局所的に生じた変化は,地域特有の大気流れを通じて,元来,都市化が顕著でない領域の気温や湿度にも多大の影響を与え得る。従って,今後,都市化が周辺地域に与える影響も考慮して,広範な領域(〜200Km四方)の土地利用のし方を考えることにより,地域規模でのよりよい大気環境の創造を考える必要があると考えられる。以上の点より,本研究は,濃尾平野一伊勢湾域を対象に,(1)都市化が周辺地域の気温分布に与えた影響にいついての暦史的データ(1975〜1985)による考察,(2)土地利用を反映した地表の熱的境界条件の定式化と簡便な三次元熱輸送シミュレーションモデルの構築,(3)モデルを用いて,都市のあり方(緑地の増加,水路,人工池など環境水面の増加)が周辺を含めてどのように地域の最高気温を緩和するかを考察した。得られた結果は,(1)沿岸部が都市化すると夏を含む暖候期の日最高気温が上昇し,かつ最高気温域が内陸に移動する,(2)この原因は,暖候期,晴天時の沿岸部に特有な海風の上流部が都市化することにより海風層が加熱されることにある,(3)人工熱源による直接の加熱はそれほど大きくなく,5月の解析対象日において名古屋昭和区の日最高気温に対する直接の寄与は,0.2℃程度である(1Km四方の平均気温),(4)都市域の緑被率,環境水面率を上げる事によって夏の高温化を防ぐ,(5)しかも,その効果は都市周辺の内陸部にも波及する。
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