研究概要 |
弱パネル型角形鋼管柱・H形鋼はり接合部の復元力特性を評価する目的で次のような実験を行った。1.パネル耐力比の違いによる柱はり接合部の弾塑性挙動の相違を明確にすることを目的に,種々のパネル耐力比を有する柱はり接合部をもつ十字形試験体の単調載荷実験を行った。2.パネル周辺枠組のみの復元力特性を明らかにするために,接合部パネルを除去した試験体の単調載荷実験を行った。3.単調載荷時で求められた復元力特性を繰返し載荷時において適用できることを検証するために繰返し載荷実験を行った。4.柱軸力が柱はり接合部の復元力特性に及ぼす影響を調べるために定軸力下における繰返し載荷実験を行った。5.合成ばりが柱はり接合部の復元力特性に及ぼす影響について評価するために,コンクリートスラブ付き試験体の繰返し実験を行った。以上のような載荷実験から以下のような結論が得られた。1.単調載荷時における柱はり接合部の復元力特性は,接合部パネルとパネル周辺枠組のそれぞれの復元力特性を求めて加え合せることにより大略予測できる。2.繰返し載荷時における柱はり接合部の復元力特性は,単調載荷時のものに移動硬化則を適用して拡張することにより大略予測できる。3.弱パネル型柱はり接合部を有する試験体において,試験体全体の荷重変形関係は,柱はり接合部の弾塑性挙動さえ考慮すれば柱及びはりを弾性体とみなしてもほぼ予測できる。4.降伏軸力比0.2程度の柱軸力は,柱はり接合部の復元力特性にはほとんど影響を及ぼさない。5.鉄筋コンクリートスラブの影響により,柱はり接合部の耐力は数10%上昇する。今後の研究計画としては,パネル周辺枠組の復元力特性を解析的に予測すること,また,本研究においては,載荷繰置の制約のために大ひずみ領域までの繰返し載荷実験ができなかったので,試験体寸法を縮小して大ひずみ繰返し載荷実験を行うこと等を予定している。
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