研究概要 |
本研究の目的は,(1)都市における高令者の余暇活動の多様化と行動圏域の拡大化の現象を,脱地域型高令者と呼ぶべき,地域を離れて活動を行う高令者層の活動の様相を通して解明する。(2)老人福祉センターなど地域活動偏重型の高令者専用施設を越えて,一般公共施設や民間施設を含む新しい余暇活動施設体系を構想すること。(3)それを通して他世代との交流を促進できる高令者サロンを提案することにある。そこでまず,福岡市の都心商業地区において,各地域から来訪する常連の高令者による様々な余暇活動が,脱地域型の余暇活動の典型であり,新しい施設体系の構想にあたって重要な手がかりを提供してくれる注目すべき活動と判断し,その活動の詳細について調査分析を行った。彼らの行動は,特定の目的はなく散歩がてらに都心の商業施設や情報施設を楽しむという意味で散策的余暇活動と名付けられるが,その行動パターンは,行動内容,行動圏域,行動人数の3指標により,ひなたぼっこ型,ストリートウォッチャー型,タウンウォッチング型,教養・娯楽・情報享受型,対人接触欲求型,広域行動型,会話型,ショッピング型の8つの類型に分類できることを明らかにし,それぞれの活動の特微を把握した。次に,このような散策的余暇活動を支援する施設として高令者サロンを想定し,常連の高令者の意見に基づき,その施設内容のイメージについて検討を行った。それは,休憩スペース,談話スペース,インフォメーションコーナーをコア空間として,可能ならば,各種の相談コーナー,食事サービス,娯楽コーナー,文献・書籍コーナーの設置が望まれること,位置は,公共交通機関のターミナルや人のよく集まる場所が効果的であること,また高令者の利用を妨ゲない範囲で一般層や若者にも開放し,お互いの接触と交流が生れる開かれた施設にすべきことを提案した。
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