研究概要 |
地熱発電においては、地熱貯留層評価が重要となるが、その評価の基礎資料となるのは地下構造,とりわけ地下き裂に関する情報である。それを得る方法として、S波スプリッテング現象を利用した断裂型地熱貯留層のキャラクタリゼ-ションが考えられる。そのためには先ず、地熱環境下における岩体のS波伝播挙動を調べる必要がある。 地熱環境下・即ち高温高圧水環境下におけるS波伝播速度の測定に際し、最も重要で技術的に困難な事は、高温高圧に耐え得るトランスデュ-サの設計製作である。数回におよぶ試作の結果、20MPa,160°Cまで測定可能な治具の作製に成功した。そして、予備実験としてサンプルを挿入しての測定を行った。その結果、S波信号が小さいことが判明したので、信号を増幅するためのプリアンプを作製し、再びテスト実験を行った。受信信号はまだ充分でないにしても,加算処理することによってS波の読み取ができるようになった。このような一連の計測システムの校正後に、実際の岩石試料について測定を実施した。先ず最初に測定したのは、直径25mm.厚さ20mmの本小松安山岩である。封圧10MPaの一定条件下で、温度を10°Cから160°Cまで、10°C間隔で上昇させ、各温度におけるS波速度を計測した。また、温度の降下過程においても測定を行った。その結果、10°Cで1.7Km/sの速度は,昇温とともに減少し,160°Cでは1.3Km/sまで下がった。その後温度を下げながらの測定によると,速度は除々に回復し、10°Cではもとの値にもどった。即ち、速度ヒステリシス現象はP波同様見られなかった。しかし,花崗岩ではP波の速度ヒステリシス現象は著しいことから,S波速度でも期待できるので現在測定中である。なお、今後の課題は計測システムが完成したことから、異方性を有する岩種について測定を行い、S波スプリッテング現象の解明を行い、実用に寄与するデ-タを得ることである。
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