研究概要 |
正弦波的な格子変調を受けた結晶の超格子による測定可能な反射の数は極端に少ないために、その変調構造の解析は回折的手法だけでは困難を極める。Bi_2Sr_2(Ca_<1-x>Ln_xCu_2O_<8+>δ(Lnは希土類元素)置換系酸化物もその例である。本研究は、上記酸化物の変調構造を解明すること、および酸化物の価数が異なるY(Nd)、Pr、Tbを選び、変調周期のLn濃度依存性、置換元素が濃度依存性に与える置換効果を明らかにすることを目的とし、高分解能電子顕微鏡観察・電子線回折実験により系統的に研究した。以下にその概要を記す。 1. 2種類の分域が規則配列した長周期変調構造模型を提唱し、その模型により電子線回析強度分布を説明できることを示した。 2. [001]高分解能像の一次元輝度変調をこの系の変調構造の本質を反映したものとして捕らえ、輝度変調を定量化して記録した輝度分布曲線を解析した。その結果、結晶中^1の分域の配列は輝度分布曲線より直接決定されることを始めて解明した。 3. 変調周期はLn濃度とともに減少するが、置換効果はPrとTbの方がYとNdより大きく、Caの2価とYの3価を基準にすると、PrとTbは3.2〜3.3価に相当する置換効果をもっている。 変調周期はLn濃度に対して段階的に減少することが明らかにされつつある。その詳細な研究は、現在改めて進行中であるが、輝度分布曲線より見い出された全ての分域配列は一次元競合系の基底状態の分域配列に対応することが判明している。 1. T. Onozuka, et al., (1991). Phys. Rev. B 43, 13066-13073. 2. T. Onozuka and Y. Hirotsu, (1991). submitted to Acta Cryst. 3. T. Onozuka, (1993). J. APPL. Cryst. 26, in the prees.
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