研究概要 |
並進対称性を前提とした結晶学では許されない五回対称を持つ準結晶の生成と安定性を調べるため、高圧下のX線構造解析の研究を行った。 I-相準結晶は当初、準安定相(i-Al-Mn)として得られるものであったが、その後安定相(i-Al-Li-Cu,i-Al-Ru-Cu)としても得られるようになった。また,局所原子配置の違いからMI-タイプ(i-Al-Mn,i-Al-Ru-Cu)とTC-タイプ(i-Al-Li-Cu)に分けられる。これらの違いによる高圧下での振舞いを調べるため,i-Al-Mn,i-Al-Li-Cu,i-Al-Ru-Cuについて実験を行った。 i-Al-Mn,i-Al-Ru-Cuはいずれも体積弾性率が大きく,高圧下でI-相が安定であったが,i-Al-Li-Cuは体積弾性率が小さく,高圧下でアモルファス相を経て,長距離秩序相へと転移した。 このアモルファス相への転移はスラギッシュであり,広い圧力に亘って両相が共存した。この転移を更に詳しく調べるためX線回折線巾の圧力依存性を調べた。回折線巾は圧力の増加につれて,顕著に増加したが,その増加がphason momentumとの相関がないため,アモルファス化は小粒経の近似結晶への転移の可能性が示唆された。再に,このI-相とアモルファス相の共存圧力下で高温実験を行った。100℃程度の温度では回折線巾は増加し,I-相の方が安定化するという結果を得た。すなわちI-相とアモルファス相との相境界は正のスロープを持っている。再に300℃程度まで昇温するとI-相は消失し,結晶相へと転移した。この結晶相が単一相であるか否か等現在解析中である。また,準結晶と同様分子自身が五回対称を持つC_<60>等フラーレンの構造変態も調べた。
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