研究概要 |
近年、FeーB基合金はアモルファス合金として注目され、広く磁性材料などとして応用され始めている。 しかし、本系に関しては、状態図については、実測または計算による研究報告がある。一方、熱力学の基礎デ-タについては、FeBとFe_2Bの比熱、FeBの標準エントロピ-、生成熱、生成自由エネルギ-、融解エントロピ-、Fe_2Bの生成熱、生成自由エネルギ-、更に0ー60mo1%B組成域での混合熱の報告があるのみで、成分活量を直接測定した研究例は、MoB(s),CuーB(1)/B_2O_3ーAl_2O_3ーCaO(1)/FeB(1),Pd(1,or Ag(1)),W(or Mo)なる電池を構成し、1523ー1673Kにおける起電力値から求めた、Yukinobuらの報告と、MoSiO_2(s),Si(1)/ZrO_2(MgO)/Si(1),SiO_2(s),Moなる電池を構成し、1723Kでの起電力値を測定して、溶融FeーSiーB合金中のSi活量を求め、この結果にGibbsーDuhemの式を適用して、B活量を算出し、FeーB系に外挿した報告、並びに熱力学モデルによる計算値があるのみである。 一方、溶鉄中に、侵入型に溶解する非金属元素である、BとCが同時に溶解した、FeーBーC系溶体の熱力学的性質は大変興味がある。しかし、本系に関しては、計算と実側により状態図の報告はあるが、成分活量を直接測定した報告は全く見当らない。 そこで本研究では、溶融AgへのFe及びBの溶解度が極めて小さいことを利用して、FeーB、またはFeーBーC系融体と溶融Agとを共存させ、両相間でのFeとBの分配平衡より、1573ー1923KでのFeーB系、並びに1873Kでの炭素飽和FeーBーC系の各成分活量を直接測定し、その熱力学的性質を論じた。 その結果、FeーB系は正則溶液の挙動を示すことが判明した。溶融FeーC系も正則溶液の挙動を示すという文献があるので、溶融FeーBーC合金系にも正則溶液の挙動を仮定して、各成分の活量を推算したところ、炭素飽和系でのFeの活量の計算値は、本実験での実測値と極めてよく一致した。
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