研究概要 |
鋼にとってマンガンは有用な成分であることから,安価なマンガン源としてマンガン鉱石が注目されてきている.このマンガン鉱石をより有効に使うために,溶鋼処理時にマンガンの回収と同時に鋼中の有害な不純物の除去ができないかということに着目し,酸化マンガンによる溶鉄の同時脱りん脱硫反応について調べた. 方法としては,アルゴン気流中で1600℃程度に保持した溶鉄上にCaF_2-CaO-Al_2O_3-Mn_3O_4系フラックスを添加し,適当な間隔で鉄試料を採取した.これらの試料のマンガン,りん,硫黄および酸素を分析し,反応速度の解析を行なった.また,実験後のフラックス試料の分析も行い,フラックスの脱りん脱硫能力を調べた.その結果,以下の事がわかった. 1)溶鉄の脱りん,脱硫反応と同時に,フラックスから溶鉄へのマンガンの移行反応および酸素分配反応が起こっていた.これらの反応は短時間で平衡に達していた. 2)フラックスのフォスフェイト・キャパシティおよびサルファイド・キャパシティを算出し,酸化マンガンを含むフラックスにより溶鉄の同時脱りん脱硫が可能であることが解った. 3)物質移動律速を仮定した反応速度解析の結果,溶鉄-フラックス間で硫黄あるいは酸素の移行が速い場合,反応初期においてすべての物質の反応速度が促進された.界面撹乱の発生が考えられる. 4)しかしながら,モデル計算によれば,実操業の規模では短時間での脱りん脱硫処理は期待できず,機械的な撹拌が必要であることを明らかにした.
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