研究概要 |
炭素綱,Al-Cu合金,Al-Si合金,Sn-Sb合金を用い,浸漬チル法により薄い凝固殻を形成し,鋳片の表面性状と凝固殻の不均一成長について調査した。その結果,次のようなことが得られた。 (1)炭素鋼の表面は亀甲状の模様を示し,模様の凹部は凝固殻の成長遅れ部に対応した。(2)亜包晶濃度の炭素鋼の凝固殻がもっとも不均一な厚さの凝固毅を形成した。(3)低炭素濃度では,チルブロック側に厚いチル晶が見られ,柱状デンドライトはそのチル晶を基として成長し,均一厚さの凝固殻を形成した。0.25%炭素濃度の試料は,短い柱状デンドライトから長いデンドライトへと変化し,そのときも均一厚さの凝固殻を形成した。0.13および0.18%炭素濃度では,チルブロック側の凝固組織がチル晶および方向性のないデンドライトが混在し,それを基として成長する柱状デンドライトも乱れた状態を引き継ぎ,不均一厚さの凝固殻を形成した。(4)Al-Cu合金,Al-Si合金の表面にはリップルマークが形成したが,それは凝固殻の成長と無関係に存在した。(5)Sn-Sb合金はボタン状のチル板と良く接した所が観察され,それは凝固殻の凸部に対応する位置に存在した。(6)Al-Cu合金およびAl-Si合金とも凝固殻は不均一に成長したが,Al-Cu合金は上下左右方向,Al-Si合金は左右方向のみに周期性のある凝固殻を形成した。また凝固区間の短い方が不均一度は大きくなった。(7)浸漬チル法の伝熱シミュレーション結果では,不均一な凝固殻形成には人為的な熱伝達不良点を設定する必要があり,上下方向の凝固に及ぼす潜熱の影響は小さかった。 以上の結果を総合すると,表面性状に依存する不均一凝固は核生成依存型であり,規則的な凹凸凝固殻を形成する不均一凝固の場合は,局所的な結晶生成,不均一な温度分布による熱応力変形,潜熱の発生などの相互作用によって生じる核生成非依存型の凝固となる。
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