研究概要 |
新機能材料の創製に不可欠な高純度金属の純度を総合的に評価できる方法の確立を試みた。 1.高純度金属中の低PPmレベルの極微量元素を定量する場合に,検出下限,精度,正確さの向上のためにしばしば必要となる予備濃縮をマイクロスケール化し,試料の分解や予備濃縮の操作が安全,容易かつ確実に行うことができる方法を開発した。特に,非常に高価あるいは貴重なために少量しか採取できない試料にも応用できるように,試料分解から定量段階まで一貫して考え,最も合理的なシステムを考案した。その結果,高純度金属中の極微量元素の不均一分布(偏析)を見いだすことができた。純度評価をマイクロスケールで行うことは,高純度試薬の節約,廃液量の削減,操作時間の短縮,ベンチスペースの節約など多くの点で好ましい。実際にイオン交換法,液-液抽出法,電着法などの新しい器具,操作などを考案し,各種高純度金属中の極微量元素を定量した。 2.予備濃縮(前電解)と定量(溶出)が結合した極めて感度の高いカソーディックストリッピングボルタンメトリーを硫黄とマンガンの定量に応用する際の問題点,種々の影響などを明らかにし,定量の最適条件を求めた。 3.標準試料を必要としない絶対定量法の電量滴定を利用して高純度金属の純度を直接精密測定できる方法を開発するための基礎的研究を行い,この方法の有用性を確認した。 4.高純度鋼中の極微量非金属元素の定量には,新しい考え方に基づく迅速かつ簡便で信頼できる分析法を開発した。炭素は湿式酸化分解を利用した電量中和滴定,硫黄は環元蒸留/カソーディックストリッピングボルタンメトリー,硫黄とリンは湿式環元反応によって水素化物として抽出したのち試験紙光電光度法により高い精度と正確さで定量できた。
|