研究概要 |
岩塩型のSrO層とペロブスカイト型のSrSnO_3層とが組み合わさった層状ペロブスカイト型構造のSrx_<+1>SnxO_3x_<+1>について、Eu^<2+>イオンを賦活した蛍光体を合成し、構造の特徴である次元性、あるいはEu^<2+>イオンの分布などが蛍光特性に及ぼす影響について系統的に検討することを目的とした。 合成実験は、SrCO_3とEu_2O_3とを所定比に秤量してアルゴンガス中1500℃、3時間で焼成後、SnO_2を加えて、アルゴンガス中1300ー1500℃、3時間の条件で行なわれ、(Sr_<1ー>yEuy)x_<+1>SnxO_3x_<+1>を合成した。得られた試料は、X=1,2,3の相として同定されたが、Eu^<2+>イオンが賦活された系として再現良く得られたのはX=1,2であった。拡散反射スペクトルの測定結果から、SrSnO_3,Sr_2SnO_4およびSr_3Sn_2O_7は、各々約4.27eV,4.95eVおよび5.06eVに吸収端をもつことがわかった。蛍光スペクトルの測定結果から、K_2NiF_4型構造の(Sr_<1ー>xEux)_2SnO_4は、400ー500nmにわたる幅広いスペクトルを示したが、Sr_<1->xEuxSnO_3や(Sr_<1->xEux)_3Sn_2O_7では、確認できる蛍光は観測されなかった。 歪みペロブスカイト型構造のYA10_3にCe^<3+>,Tm^<3+>,Pr^<3+>の各イオンを賦活し、結晶場の対称性が蛍光スペクトルに与える影響について調べるために、Tm^<3+>やPr^<3+>系では、大気中1500ー1700℃で、Ce^<3+>系では、アルゴン雰囲気下、1500℃で焼成し試料を得た。得られた試料はいずれも所定の単一相であった。(Y_<0.99>Ce_<0.01>)A10_3における励起、及び発光スペクトルを測定した結果、いづれもブロ-ドでCe^<3+>の4f→5d遷移に帰属されるものであることがわかった。一方、Tm^<3+>,Pr^<3+>を賦活したものは、各イオン濃度X=0.01付近で蛍光強度の最大となる濃度消光が顕著に現われた。こうした結果を踏まえて、YA10_3では、三次元的なエネルギ-回遊の起こっているものと考えられ、高濃度賦活を行なうには、K_2NiF_4型構造のように母結晶の次元性が重要であると考えるに至った。
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