研究概要 |
1.フッ素-グラファイト層間化合物C_XFの生成 単体フッ素のグラファイトへのインターカレーション速度は,より低温ほど速く,室温〜-78℃における長時間(14〜140日間)反応によって,広い組成範囲のC_XF(3.6<x<13.2)が生成する。HFやSbF_3存在下でのフッ素のインターカレーション反応の速度は非常に速くなり,1週間程度でC_XF(3<x<13)を生成する。 2.C_XFの構造 6<xまでのCxFにおける挿入種の大きさは2.7Å,繰り返し周期I_C=9.4Åで,フッ素がイオンとしてグラファイト層間の中央に存在する。これよりフッ素濃度の高いC_XFでは,C-F結合はイオン性から半イオン結合性へと移行し,I_C=10.6Åとなる。 3.C_xFの物性と面内電気伝導度б_<ab> σ_<ab>は層間フッ素濃度の増加と共に増加し,第2ステージ化合物C_<8.4>Fがσ_<ab>の最大値2.25×10^5S/cmを与えた。この値は,もとのグラファイト結晶の10倍である。さらなるフッ素濃度の増加につれ,σ_<ab>は急激に減少し,C-F半イオン結合をしているC_XFではもとのグラファイト結晶のσ_<ab>より低くなる。C_<6.1>Fの場合,π電子帯に正孔が生じることによるフェルミ準位の低下は0.72eV,炭素原子,フッ素原子1個当りの電荷移動量はそれぞれ0.01,0.07であった。 4.C_XF,C_XAsF_6の二次元相転移 C_<5.7>FのDSC測定から,150Kで層間化学種であるフッ素の二次元的なorder-disorder転移が明らかにされた。C_<16>AsF_6は171〜180Kにorder-disorder転移があり,170K以下ではネスリングしたAsF_6^-が面心斜方格子の超格子配置をとり,グラファイト層はAB型積層をとる。
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