研究概要 |
ガラスの弾性率を向上させるには,強い結合力をもつアルミナ,チタニアや希土類酸化物を主成分とし,密なガラス構造を形成することが必要であるといわれている。しかしながら,アルミナ,チタニアや希土類酸化物を通常の溶融法でガラス化することが困難であるため,高弾性率を有するガラスを得るためには,他のガラス作成法を採用することが必要である。そこで,本研究では,気相を通して非晶質を作成する方法の一つであるスパッタリング法を用いて非晶質薄膜を作成し,高弾性率をもつ非晶質薄膜の開発を試みた。一般に,酸化物中の酸素を一部窒素に置換するとその弾性率が著しく増大することが知られているため,溶融法では作成することができないAl_2O_3中の酸素の一部を窒素で置換したAl-O-N系の非晶質薄膜を,高周波スパッタリング法により作成し,その弾性率を振動リード法により測定した。しかしながら,Al_2O_3のヤング率が122GPaであるのに対し,AlNの増加にともないヤング率は減少し,約50mol%AlNで極小を示した。これは約50mol%AlN以下の組成では,6配位のAl^<3+>が減少,4配位のAl^<3+>が増加することによる配位数の低下が,窒素置換による弾性率増加の効果を打ち消したためであると考えられる。したがって,いかに陽イオンを高配位状態に保ったまま非晶質にできるかが,高弾性率を得るための条件となる。いま,Al_2O_3-TiO_2系非晶質膜において,約80mol%TiO_2以上の組成で,すべての陽イオンが6配位状態で存在することが報告されている。そこで,高周波スパッタリング法によりAl_2O_3-TiO_2系非晶質薄膜を作成し,弾性率の測定を行った。その結果16Al_2O_3・84TiO_2の組成の非晶質膜でいままでに報告されているどの酸化物ガラスよりも高いヤング率175GPaが得られた。このヤング率の値は,ガラス中で最高のヤング率をもつSi-Y-Al-O-N系オキシナイトライドガラスの値にほぼ匹敵するものである。
|