研究概要 |
カルシウム化合物の量産型工業であるセッコウ,石灰,セメント工業は,天然原料をそのまま素材として加工するエネルギー大量消費型,安価大量生産型の工業で,その歴史は古いがセラミックスなどとくらべると用途範囲が限定され,ファイン化が遅れている工業分野である。近年,これらの工業分野においても新しい機能性を付与した材料の用途開拓が緊急課題となっている。業者らは,代表的なカルシウム化合物であるセッコウ,石灰,セメントに関する合成と形態制御について,長年の研究実績を積み重ねて多くの報告を行ってきた。 本研究では,とくに10^<-1>オーダの溶解度を有するカルシウム化合物に着目し,経済的で簡便な液相法による溶解,析出のプロセスにより,その核生成と非晶質化,特定面の成長による形状制御,繊維化,高純度化,単結晶化を中心とする材料形態の制御,溶解性の高い化合物の難溶化,生体親和性の向上をはかるための組成制御とそれにともなう物性変化などについて検討した。 その結果,繊維状セッコウの合成と難溶化,繊維状炭酸型エトリンガイト(C_3A・3CaCO_3・32H_2O),六角板状カルサイトなどの形態制御が可能となった。これらは,紙,ゴム,プラスチィクなどの機能性フィラーとして有効である。また,非晶質炭酸カルシウムおよび非晶質リン酸カルシウムなどの合成にも成功し,これらの結晶化による形態制御も期待される。さらに,Al^<3+>置換型トバモライトのイオン交換特性の向上は,カルシウム化合物への新たな機能性の付与として注目される。
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