研究概要 |
大きな配向性を持つ透明酸化亜鉛結晶に関し,7mm角以上の大きな試料を再現性良く合成する技術を確立した.具体的には前年度に開発した基板回転法に加え,すでに成長した配向性酸化亜鉛を基板とするこによりなされた.このような容易な試料供給を基に酸化亜鉛圧電体作成のためのLi_2O添加を検討した.Li_2Oは熱拡散法により添加することが唯一の方法である.この時内部までを均一に絶縁化するためには微量のLi_2COを試料表面に塗布し,熱拡散を行い,これを繰り返すことが最も有効であった.この結果,圧電性能の一つである電気機械結合係数は配向性に強く依存し,絶縁性の均質性が不良の場合には若干劣る.しかし(001)面以外のX線回折ピークがほとんど観測されないほど配向性に優れた試料では,100MΩcm以上の抵抗値を持つ時単結晶における報告値にほぼ匹敵した.さらに光伝導特性の測定より,励起電流が電圧印加方向及び電圧に依存することが確認された. 本法を応用して粒界モデルの作成を試みた.すなわち本法により合成される酸化亜鉛は成長方向に対しC軸が優先配向することから,初めに作った酸化亜鉛のC面あるいはそれに垂直なA面を基板としてその上にさらに成長を行ういわゆる2段成長法により明瞭な境界面を持つ試料を作成した.バリスターにみられる酸化亜鉛粒界における電位障壁は粒界過剰酸素により主に達成されることは種々の実験結果より明かである.本試料はさらに粒界の組み合わせに関する精密な議論を展開するために用いられた.その結果,液体窒素温度においてC面同士を接合した場合において明瞭な障壁が観測された.これに対し,面の整合性が取りにくいはずであるCとA面の接合では観測されなかった.これは過剰酸素以外に,C軸が分極軸であることを考慮して障壁粒界を考慮すべきことを示唆するものである.
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