研究概要 |
セラミックスのマイクロ波加熱に関する過去の研究の多くはAl_2O_3,ZrO_2に集中してきたが,マイクロ波加熱の特徴である短時間昇温や選択的加熱などを考えると広範囲の応用が望まれる.そこで,広義の誘電体である金属酸化物16種の粉体を成形して透明石英管にいれ,2.45GHzのマイクロ波を各種出力(0.1〜1.0kW)で照射したときの試料の温度を測定し,加熱状況を調べた.また,いくつかの酸化物の誘電率,誘電損失を1kHz〜13MHzの範囲で測定した.その結果,ZnO,aーTiO_2,MnO_2,NiO,CoO,SnO_2,CuO,YーZrO_2はマイクロ波で加熱できるが,MgO,SiO_2,Nb_2O_5,Ho_2O_3,Ta_2O_5,Fe_2O_3,Y_2O_3,rーTiO_2は加熱できなかった.1kHz〜13MHzにおける誘電率と誘電損失を用いて計算した電力半減深度と,マイクロ波(2.45GHz)による加熱の有無には相関があった. 特にマイクロ波で安定して加熱できるaーTiO_2とZnOについて詳細に調べた結果,以下のことが判明した.一定の大きさのaーTiO_2にマイクロ波を照射すると,低出力では主に裏面だけが数百度程度にしか加熱されないが,高出力では内部が良く加熱されて焼結し,表面温度は約850〜1000℃となった.しかも後者の場合,表面温度はあまり出力に依存しなかった.このように内部が加熱されて焼結する最低の出力は試料の大きさの増加と共に低出力側に移動した.すなわち,試料が大きいほど加熱され易い.これは試料が小さいと,石英へ失われる熱が多いためと考えた.このようにaーTiO_2のマイクロ波加熱焼結体には温度むらがあった.ZnOにおけるマイクロ波加熱と出力の関係,試料の大きさの関係はaーTiO_2の場合とほぼ同じであったが,加熱は均一で安定した焼結が可能であった.このような違いには酸化物の2.45GHzにおける誘電率,誘電損失が関係しているが,デ-タがないため定量的な考察は出来ない.したがって,今後この方面の研究が望まれる.
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