研究概要 |
二酸化炭素の電気化学還元を水溶液で行うと、電極に用いる金属により、反応の生成物は大きく異なる。このことから、電極金属は4種に大別できる。第一に、主としてメタン、エチレンなどの炭化水素(HC)を生成するHC金属(Cu)、第二にCOを生成するCO金属(Au,Ag,Zn,Pd)、第三に蟻酸を生成する蟻酸金属(Sn,Pb,HgCd)、第四分類の金属上では二酸化炭素の還元はほとんど進行せず、主として水分解が進行し、水素のみが生成する(Ni、Fe、Pt)。第一分類の金属電極上で炭化水素生成は中間生成種として、COを経由することが知られている。従って二酸化炭素の還元に活性な金属は、大きくCO生成金属と蟻酸生成金属に分類できる。本研究では二酸化炭素の電解還元を行わせながら、電極表面に原子状の金属を折出させる手法で電極を修飾しつつ、反応の経過を調べた。これにより、CO生成金属および蟻酸金属は、その活性に対応する序列があり、CO生成能ともいうべき物性によって特長づけられることが明らかになった。またadatom修飾電極の電極触媒活性に対して、下地金属の影響が重要な因子であることが明らかになった。 Cu電極は、Co_2をCH_4、C_2H_4,アルコール,アルデヒドに転換する特異な特性を有している。そこでCuの電極触媒活性がどのような条件で出現するかを明らかにするために、Au多結晶電極上に、Cuを電析させたAu/Cu電極を用いて、CO_2還元を行い検討した。Au電極でCO_2電解を行うと、主にCOが生成し、炭化水素種の生成はみられない。Cuを一層電析させたadatom電極について、-1.50Vvs.SHEでCO_2の電解を行ったが、炭化水素種の生成はみられなかった。Cuの電析量が2層以上になると、ごく微量のCH_4、C_2H_4の生成が検出され,4層のCuで定量可能となった。さらにCuの被覆率が増加すると、CH_4、C_2H_4,アルコール,アルデヒドの電流効率は増加し、一方でCOは減少する。以上により、Cu上でのCO_2を還元した際の炭化水素種の生成は、単原子層上では起こらず、数原子層以上の厚みをもったバルクのCuの状態が必要であると結論される。
|