研究概要 |
塩化銅(I)を触媒に用い金属ケイ素とメタノ-ルとからトリメトキシシランを直接合成する反応について,次の点が明らかになった。ケイ素と塩化銅(I)を高温(723K)または低温(493ー553K)で加熱前処理後,メタノ-ルを供給すると、メトキシランが生成する。メトキシシランのうちトリメトキシシランの選択率は,高温加熱前処理では70ー80%と低いのに対し,低温加熱前処理では96ー98%と高い。ケイ素表面での反応サイトの形成にはメタノ-ルが関与し,反応サイトの生成速度はメタノ-ル圧に依存する。反応サイトの性質は,反応中に変わることがない。高温加熱処理後のケイ素表面には,Cu_3Siが点在する。ケイ素ーメタノ-ル反応はCu_3Siを中心として進行する結果ケイ素表面には穴が点在し,ケイ素転化率の増加とともに穴は大きくなる(穴の数は一定)。一方,低温加熱処理では,加熱前処理後のケイ素表面にはCu_3Siは検出されず,ケイ素ーメタノ-ル反応によってできる穴の数は,高温加熱処理のときに比較してはるかに多い。メタノ-ルの反応次数および反応の活性化エネルギ-は,加熱前処理温度によって異なった。加熱前処理温度によってケイ素表面の活性化過程は異なる。 エタノ-ルと金属ケイ系との反応も塩化銅(I)を触殖に用いると進行する。この場合エトキシシランが生成する。エトキシシランのうち,トリエトキシシランの選択率は,高温加熱前処理(723K)では10ー35%と低いが,前処理を行なわないときには98ー99%と高い。加熱前処理条件をはじめ,反応温度,触媒量,エタノ-ル圧などの反応因子がトリエトキシシラン生成速度に与える影響を調べ,この反応についての基礎デ-タを採取した。
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