研究概要 |
バナジン酸イオンあるいはニオブ酸イオンは水溶液中で,溶液のpHの値によって構成する金属イオンの数の異なる錯イオンを形成する。これを利用して,pHの制御された溶液にシリカを浸漬し,錯イオンを平衡吸着したシリカを分別,乾燥後,空気中で焼成することにより,シリカ上に高分散状態で担持された酸化バナジウムおよび酸化ニオブ触媒を調製し,その局所構造,分散度を各種分光法により評価するとともに,これらがプロピレンの光酸化反応において,生成物分布に与える影響を調べた。 酸化バナジウム系触媒の場合,担持量が0.8%と低い触媒では,浸漬液のpHに関係なく,バナジウム種は全て歪んだ4面体構造をとっているが,その分散度はpHの高い浸漬液から調製された触媒ほど高いことがEXAFS,りん光スペクトル,重酸素標識アセトンとの交換反応の結果より結論された。この分散度の変化はプロピレンの光酸化反応において生成物分布,特にプロピレンオキシドの生成量に影響する。触媒のバナジウム担持量を増加させると,4面体構造種に加え,歪んだ8面体構造を持つ種が共存するようになるが,担持量が11.6%の触媒ではこれらがほぼ等量存在することが,XANESの哲量的な解析から明かとなった。またESR法により,反応中間体として,以前に生成物から推定されていたπーallylラジカルの存在が確認された。 酸化ニオブ系触媒の場合は,浸漬液のpHが4.5以上では沈殿が生じるため,pHの値は2.3から4.0の範囲で触媒を調製したが,いずれの触媒も歪んだ4面体と8面体構造のニオブ種を含み,8面体構造種はニオブ担持量と共に増加することがXANESの解析から明かとなった。りん光の発光強度はpH=3.7の浸漬液から調製された触媒が最大であり,分散度はこの触媒で最も大きいと推定される。
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