研究概要 |
石炭の溶剤抽出物、高圧水素化分解反応生成物などの石炭液化油は多数成分の複雑な混合物である。この化学構造の評価方法として、構成成分を芳香環一ナフテン環(ヒドロ芳香族環)構造の化合物タイプ(Z数)として表わし、この種類とこれに置換するアルキル基炭素数の異なる同族体として特徴ずけるのが適当であることを述べてきた。この化学構造の評価法によって、Illinois No.6炭(C%:80.7,S%:2.5)及び三池炭(C%:84.5,S%:1.0)のn-ヘキサン可溶の溶剤抽出物(抽出オイル)及び水素化分解生成オイル(水素化分解オイル)の化学構造の特徴を的確、且つ確実に評価、比較する事ができた。抽出オイルと水素化分解オイルの化合物タイプの種類は両者で同じであるが、この含量分布並びに各化合物タイプ同族体の分布は両者で僅かながら異なる。これが石炭化反応によるものか水素化分解反応によるものかは、現在検討中である。 石炭液化油をアミンカラムのHPLCによって、飽和炭化水素および芳香族環数ごとに更に極性化合物の各化合物クラスに分類、分別する事が出来、以降の構造解析に多くの利点をもたらした。分別した化合物クラスフラクションの構造解析から、各フラクションはナフテン環数の異なるヒドロ芳香環(芳香環数は揃っている)が混在している。ヒドロ芳香環のナフテン環数による分別法として有望視されたODSカラムHPLC及びリサイクルGPC分別法は、側鎖アルキル基炭素数による分離がナフテン環数による分離特性と相競合する事が分かり、ナフテン環による選択的分離には成功しなかった。引き続いて平成4年度には、カーボンカラムHPLCが溶質成分との平面配向性によって、ヒドロ芳香環を分離することが出来るかを検討した。この結果、ヒドロ芳香族化合物の異性体によって分離がなされることを見いだした。
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