研究概要 |
本研究の最大の目的であるチエノ[2,3ーb]インドリジン誘導体への重要な中間体であり、且つ反芳香族16パイ電子系を有する分子、ピリド[2,1ーc]チエノ[3,2ーe]チアジン誘導体の構造証明は、元素分析、各種スペクトル解析によって行っただけでなく、2つの化合物の単結晶X線構造解析によって明確に行うことが出来た。そして、この構造解析によって判明したことは、この分子内のピリジン環とチオフェン環はその構造デ-タから明らかに芳香族であるのに対し、その1,4ーチアジン環は1つの炭素ー硫黄単結合が伸びて非平面に成っており、この位置で共役系が切断されているという事実である。このことは共役系が見かけ上反芳香族16パイ電子を有していても、分子が非平面を取ることによって反芳香族的な不安定化を免れていることを意味する。従来反芳香族分子が不安定で様々な興味深い反応を行うことが知られているが、X線構造解析によりその構造デ-タが示されたことは殆ど無いので、これらの知見は特に重要であると思われる。又今回これらの化合物の熱的な反応において、それぞれ転位あるいち脱硫したチエノ[2,3ーb]インドリジン誘導体が初めて得られ、それらの反応に及ぼす置換基効果が以前得られた結果と同じであることが確認された。さらに多官能化されたインドリジン誘導体の1、3位の置換基の反応性の順序を決めるための実験として3位にシアノ基を有するインドリジン誘導体が合成され、それらの3ーアミノチエノ[2,3ーb]インドリジン誘導体に方換することにより、その高い反応性を証明することが出来た。そのほか、ヘテロ環を縮合したインドリジン誘導体の構造解析の一環として、ピラノ[2,3ーb]インドリジン誘導体の単結晶X線構造解析を行った。 これらの成果は、印刷中1報、投稿中1報、投稿準備中1報である。
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