研究概要 |
各種の固体酸触媒によりエチレングリコ-ルの分子内脱水の挙動を比較し,nーAl_2O_3とシリカ担持ピル硫酸カリを選定して洒石酸エチルの脱水脱炭酸によるピルビン酸合成に応用した。nーAl_2O_3では、アルコ-ルの脱水とともにエステルの加水分解にも高活性を示すので、ピルビン酸が生成しても脱炭酸により分解してしまう。これに対して、K_2S_2O_7/SiO_2では,洒石酸エチルから60%,グルセリン酸メチルから50%の好収率でピルビン酸エステルを収得できた。担持ピロ塩による脱水量論をはるかに超える量のピルビン酸エチルが定常的に得られることは,ピロ硫酸塩によりグリコ-ルの脱水と酸性硫酸塩の生成、その脱水によるピロ塩の再生を繰返して触媒機能を発揮していることがわかる。 洒石酸エチルの分子内脱水で生成するピルビン酸の前駆中間体、オギザロ酢酸エチルをK_2S_2O_7/SiO_2に供給したところ、通塔直後にはピルビン酸エチルの収率50%で,ーCOOH基1個の脱炭酸に相当するCO_2を与えるが,経時的にピルビン酸エチルが増大して85ー90%に達した。 酸性硫酸カリを窒素中で昇温すると180℃付近から重量の減少が始まり、300℃に保つと緩やかにピロ塩レベルに到達する。ここで洒石酸エチルの脱水で生成する水に相当する水蒸気を共存させると速やかに水を吸収するが,酸性塩に戻らず、モル比67%ピロ塩の組成で平衡に達することがわかった。水の供給を停止すると再び緩やかにピロ塩に戻る。この触媒はピロ塩67%組成の融液としてシリカ細孔に保持されており、脱水は速やかであるがエステルへの攻撃はおそく,生成ピルビン酸エチルの安定捕集に寄与していると結論貞きる。酸性塩を300℃で5hr焼成してもSO_3は検出されず,粉末X蜻によりピロ塩を生成していることが確かめられたが,シリカ担持ピロ塩は直径120Åの円筒内面に厚さ7Åの薄層として担持されていると計算され,X線的にも無定形であった。
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