研究概要 |
強い発光を示す2ーアミノピリジンの各種誘導体を合成し、その電子吸収および発光スペクトルを測定した。各誘導体の合成は、既報の方法に準じて行ったが、合成例の少ない非対称置換ビピリジンの合成には新たな合成法を検討し、新規化合物の構造は各種スペクトル法で確認した。その結果、(1)2ーアミノピリジン構造を持つ化合物はいずれも希薄溶液中で350ー450nm付近に発光を示す、(2)ピリジン環部分で結合した2,2'ービピリジン骨格を持つ2ーアミノピリジン二量体は、単核のアミノピリジン誘導体よりスト-クスシフトが大きく可視部に近い発光を示し、発光の量子収率も高い、(3)アミノ基部分で結合してジピリジルアミン構造を持つ二量体は、非極性溶媒中で強い発光を示すが水素結合の影響を受けて消光する;などの知見が得られた。 上記の検討より、2,2'ービピリジン構造をもつアミノピリジン誘導体が固相有機発光体の分子構造として最敵と結論され、各種置換2,2'ービピリジンの合成および光物性の検討を行った。その結果、(1)希薄溶液中で6ーアミノ置換体は強い発光を示すがクロロ置換体は発光を示さない、(2)6ーアミノー6'ークロロ非対称置換体の発光はジアミノ置換体より長波長側で強い、という結果が得られ、分子軌道法による検討から励起状態におけるピリジン環同士の分子内電荷移動が発光に重要なことが示された。一方、固相でも6ーアミノ置換体は可視部に強い発光を示し、希薄溶液中で発光しないクロロ置換体でも置換位置非対称な4、6'ージクロロ体は濃厚溶液や固相で可視部に強い発光を示すことが判明した。このように2つのピリジン環上の置換基の種類や位置を非対称にすると固相で強い発光がみられるという事実は、従来ほとんど不明であった固相での発光の理解を進める上で重要な知見であり、非対称置換という手法が新規な固相有機発光体の分子設計指針として有用であるという結果が得られた。
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