研究概要 |
本研究では、ゲルをマクロに配向させて、解析に有利な状況を作り、多面的なゲル構造を捉えることをまず考えた。また、ゲルに目的の機能を付与すべく、配向制御、構造制御を行うための手段、方法を発展させることも、生体の機能ゲルの組織構造に照らして重要であると考えた。この点を踏まえ、2価金属イオンと錯体形成をとおしてゲル化する性質をもつ、アルギン酸ソーダをモデル物質に選んだ。このポリマーの水溶液を細管内を流動させ、Pb,Cu,Ca,Znの2価金属イオンの水溶液の中に押し出す方法により、マクロに分子配向したアルギン酸金属錯体ゲルを得た。分子配向あるいは構造形成に及ぼす、流動、ゲル化、ならびに金属イオンの影響について、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡、広角X線回折、力学測定により検討した。流動下のアルギン酸ソーダは、剪断速度とともに、coil-stretch転移が増すが、試みた3800sec^<-1>までは、分子はマクロには円筒的な面配向を示した。ゲル化はdie swellを引き起こし分子配向を歪める。生成ゲルはしかし面配向の傾向にあった。剪断速度の効果はゲル化で相殺され、ゲルの異方性の極大が低剪断域で見られた。die swellはPb<Cu<Ca<Znであり、異方性はPb>Cu>ca>Znの順を示した。ゲルの応力-伸び曲線から、Pb、Cuでは弾性率、強度ともに高く、伸びは低い。Ca,Znではその逆の挙動を示した。G(グルロン酸)richならびにM(マンヌロン酸)richの延伸ゲル繊維の広角X線回折写真は、G、Mともにほぼ2_1ラセン形態にあることを示した。これはHard-Sphere Mapの計算結果とも矛盾しない。金属イオンとM/G比に依存した別の周期構造の存在が認められたが、これについては検討を続けている。
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