研究概要 |
本研究では同じメソゲン基(p,p´ビフェノ-ル)を持ち、異なったメチレン鎖長を持つ種々の多量体を合成し、それらを各量体に分離し、各量体の熱力学デ-タを集積しすることにより、重合度およびメチレン鎖長の液晶発現への効果について検討し、次のことを明らかにした。 (1)n=6のとき、液晶相発現に顕著な多量体効果があった。単量体B6Bは液晶相を示さなかったが、二量体(B6)_2Bはモノトロピックなネマチック相を、三量体(B6)_3Bはエナンチオトロピックなネマチック相を示した。このくりかえし単位よりなるポリマ-はスメクチック相を示すことにより、単量体は液晶を示さないが、重合度増大とともに、モノトロピックなネマック→エナンチオトロピックなネマチック→スメクチックへと変化することが明らかになった。 (2)(B6)_3Bの△S_<NI>/△S_<KI>は0.15であり、高分子液晶の値に近く、低分子液晶の値0.03‐0.05よりかなり大きい。。また、モノトロピックである(B6)_2Bおよび(B8)_3Bの△S_<IN>/△S_<KI>はそれぞれ0.13、0.19であり、両者もまた高分子液晶の値に近い。したがって、これら二量体もしくは三量体のネマチック相の規則性は、ほとんど高分子液晶と同じと考えられ、今後、二量体および三量体の詳細な研究により,高分子液晶ネマチックの秩序状態を明らかにできることがわかった。 (3)異なったメチレン鎖長の三量体を比べるとメチレン鎖長によって液晶発現に大きな差があることがわかった。たとえば、(B6)_3Bはエナンチオトロピックなネマチック相を12℃の温度範囲にわたって示す。しかし、(B8)_3Bはモノトロピックなネマチック相を示すのみである。そして、n≧10ではもはや液晶を示さない。一般にこの効果はメチレン鎖による希釈効果として解釈されている。いま、両末端はメソフェ-ズの安定性にほとんど寄与していないとすれば、多量体化による液晶発現を重合度増大によるメチレン鎖に対するメソゲン基の相対的な増加、すなわち濃縮効果と解釈してもいいのかもしれない。
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