1.光応答分子を組み込んだ高分子液晶の調製。 側鎖にフェニルベンゾエ-ト(PAPBn)やシアノビフェニル(PACBn)を有する高分子液晶を調製し、そのガラス転移温度(Tg)および相転移温度をそれぞれDSC、偏光顕微鏡観察によって決定した。PAPBn、PACBnのホモボリマ-についてはBMABなどのアゾベンゼン誘導体を数モル%ド-ブした。 2.高分子液晶の光相転移挙動。 キセノンランプやYAGレ-ザ-を光源として用いて、高分子液晶フィルムにフォトマスクを被せ、画像定着を行った。画像は露光部の等方相(すなわちクロスニコル下で暗視野)、非露光部の液晶相(ネマチック相;クロスニコル下で明視野)のコントラストで記録することが明らかになった。更に、レ-ザ-で画像定着後、試料の温度をTg以下に保つことにより記録は長期間(約半年以上)も安定に保存できることが明かとなり、低分子液晶では数十分で記録が消滅しのに比較して、高分子液晶の場合は記録保存安定性が極めて高いことがわかった。もちろん、記録の書き込み・消去は完全に可逆であり、何回でも書き込み・消去ができた。解像度として2μmという値が得られ、より高解像度化は干渉などを無くすことによって可能であろう。 3.高分子液晶の光相転移挙動の時間分解測定。高分子液晶はメリゲンの運動性が主鎖の制約を受けるため、応答性が低下することが予想された。調製した高分子液晶の真の応答性を評価する目的で、YAGレ-ザ-パルスを用いて極短時間(10ns)で光応答分子の異性化を終了させ、系の熱力学的状態を非平衡のN状態とし、平衡状態のI状態への緩和過程を複屈折率の時間分解測定を行うことにより実時間で追跡した。その結果、PAPB3/BMAB系では200msで相転移が完了することが明らかになった。この200msという値は、低分子液晶系の100msとあまり変わらず、電場応答では高分子液晶が圧倒的に不利となるのと異なり、光応答においては高分子液晶は低分子液晶と比較してほぼ同じような応答を示すことがわかった。更に興味深いのは、コポリマ-の応答性である。PAPB系コポリマ-では50msという低分子液晶と比較しても速い応答が得られ、高い記録安定性を加味すると、高分子液晶はフォトンモ-ドの光記録材料として非常に優れていることが明らかになった。
|