研究概要 |
本研究では、生体吸収性高分子の化学修飾ならびに生理活性物質の固定化を行い、新たな生体機能性を付与した吸収材料の開発を行い、その生理活性を検討するとともに細胞との複合化を試みて生体組織、器宮の再構成を行うことを目的としている。 これまでに、著者は、α-リンゴ酸エステルとグリコール酸の複合単位からなる環状ジエステルモノマーである3-(S)-[(alkoxycarbonyl)methyl]-1,4-dioxane-2,5-dioneの合成を行い、その単独重合ならびにラクチドとの共重合によりリンゴ酸単位を含むポリ(α-ヒドロキシ酸)が容易に得られることを見い出した。そしてラクチドとの共重合比を変化させることにより、ポリ乳酸の加水分解性を制御できることを示した。特に、側鎖カルボキシル基をベンジル基で保護した3-(S)-[(benzyloxycarbonyl)methyl]-1,4-dioxane-2,5-dione(BMD)を用いた共重合体は、重合後の側鎖の脱保護が容易であり、このカルボキシル基に対して様々な化学修飾を行うことにより高次の機能性を有する吸収性材料の開発が示唆された。そこで、著者は、その一例として、BMDとL-ラクチドの共重合体を脱保護して得られる乳酸-グリコール酸-リンゴ酸共重合体(PMLA)の側鎖カルボキシル基に細胞接着因子であるRGD(Arg-Gly-Asp)トリペプチドを固定化し、細胞接着性の制御ならびに細胞との複合化による生体組織、器官の再構成(Guided Tissue Regeneration)を検討した。その結果、PMLAのフィルムにRGDペプチドを容易に固定化できること、固定化により細胞接着性の制御が可能なことが見いだされ、このようなポリエステル-ペプチド複合体が吸収性の細胞接着マトリックスとして有効であり、ハイブリッド型医用材料として応用も可能であることが示された。今後の展開に興味がもたれるものと確信する。
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