研究概要 |
サツマイモとその近縁野生種におけるトランスジェニック植物体の効率的作出法の開発を目的として,カルスおよびリーフディスクからの植物体再分化系の開発を行い,さらにそれらの再分系を用いたAgrobacterium感染処理による形質転換法について検討した。 植物材料としてサツマイモ6品種およビ近縁野生2倍体種(I,leucantha)3系統を用い,A.tumefaciens株としてTiプラスミドにGUS遺伝子とカナマイシンおよびハイグロマイシン耐性遺伝子を組み込んダEHA101系統を用いた。 サツマイモの茎頂,葉柄および茎をA.tumefaciensの菌液に20分間浸漬した後,抗生物質(ハイグロマイシン+G418+カルベニシリン)を含むカルス誘導培地に置床したところ,抗生物質耐性のカルスが誘導された。これらのカルスではGUS遺伝子の発現がみられ,形質転換されていることが確認されたが,これらの形質転換カルスから再分化個体は得られなかった。つぎに,2,4-Dを用いて高頻度の植物体再分化率を示す胚発生カルスを誘導した。これらのカルスとA.tumefacicensとを3日間共存培養したところ,抗生物質(ハイグロマイシン+カナマイシン+カルベニシリン)耐性の胚発生カルスが得られた。これらのカルスの一部では不定胚が形成されたが,植物体の再分化は認められなかった。 リーフディスクをNAAを含むMS培地に置床したところ,サツマイモ2品種(Jewel,台農10号)において,カルスを経由しない植物体の再分化が認められ,さらにリーフディスクから発生した不定根をホルモンフリーの培地に移植した場合にも植物体の再分化が認められた。リーフディスクをA.tumefaciensと共存培養後,形成された不定根のGUS活性を検定した結果,形質転換細胞が認められた。これらの不定根の中には選択培地上で増殖するものも認められたが,再分化個体は得られなかった。
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