研究概要 |
前年度より引続き作物の幼植物の根における硝酸イオン吸収をミハエリス=メンテン式により解析した。コムギ,ライムギ,ライコムギ計7品種の播種後8日目における硝酸イオン吸収のKmは25°Cにおいて93-159μMであり,イネよりもやや高かった。また,耐湿性の異なるオオムギ品種について同様の実験を行った結果,耐湿性の強弱とKm,Vmaxの間には関係がないことが明らかになった。 硝酸イオン吸収に関してキャリアーの親和度を簡便に判定する方法を考案した。すなわち,硝酸イオン吸収速度が400μMにおいてほぼプラトーに達すること注目して,400μM10μMにおける吸収速度の比を求めた。Vmaxが同程度なら40μMにおける吸収速度が大きい品種には親和力が大きいものが含まれると予想した。この仮定に基づき,イネ約150品種について両濃度からの硝酸イオン吸収を調べた。その結果,吸収速度の比に品種間差異が存在することを認めたが,その比がKmの差異を表すかどうか確認するまで実験を進めることができなかった。 根の電位差と硝酸イオン吸収との関連については測定上の問題に加え,明瞭なイオン吸収の差異が認められなかったのでデータを得ることができなかった。 以上の結果と前年度までの結果を併せて,ミハエリス=メンテン式の定数を用いた作物の硝酸イオン吸収能を明らかにし,吸収能の育種の基礎資料を得ることができた。
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