研究概要 |
平成3〜5年度の3年間,有機質肥料の施用が水稲の生育収量に及ぼす影響を検討した。品種日本晴を用いて圃場栽培を行い,処理区は基肥要因,追肥要因,農薬要因を組み合わせ,対照区として化学肥料・農薬の区を設けた。 平成2年度の予備実験では有機質肥料を中心に化学肥料を補完的に施用した区が化学肥料のみの対照区に近い収量となったが,平成3年度実験では有機質肥料のみでも化学肥料単用区に匹敵するほどの収量となった。ただし,無農薬・慣行油粕追肥系列区では分げつ数,有効茎歩合が低いため穂数,総籾数が減少し,低収となった。 平成4年度実験では,有機質肥料(菜種油粕)の追肥を行うことにより,化学肥料区と同等の高い収量をあげ得ることが指摘できた。また,収量は総籾数の多少により影響され,総籾数には穂数が,また穂数には最高分げつ期茎数が大きく関係していた。 最終年度には,1990-1993年の4年間の結果について,収量とその減収要因について解析を行った。4年間の平均収量は無農薬区で低く,年次変動も大きかった。その年次変動には雑草特にコナギの発生量が関係していた。90,91年はトビイロウンカが大発生したが,登熟後期であったため,登熟歩合の低下は小さかった。92年に除草区を設けて試験を行ったところ,雑草との競合による穂数の減少が収量に最も影響することが確認された。また,水田生態系を構成している生物相を調査した結果,水稲個体群の動物相は農薬の使用により種類数,総数が減少したが,農薬の影響が認められない種もあった。さらに田面水中および土壌中の動物相は,農薬の使用による総数の変化は小さく,特定の種に個体数が集中する傾向があった。また,有機物無施用の慣行区では総数が著しく減少するなど,有機物施用と無農薬により水田生態系が多様化することも認められた。
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