研究概要 |
低温感受性の青果物の,低温障害の発生を防除する目的で,C_<10>-C_<18>のショ糖脂肪酸エステル水溶液(0.35%)処理を行い,障害を軽減できるかどうかを調べた。同時に,その作用桟作を明らかにするために組織やカルスにショ糖脂肪酸エステルを処理し,低温下での生理変化を調べた。1.実バエの低温殺虫卵のシミュレーション実験を行い,1℃で15〜16日間低温処理後,20℃に昇温したポンカンの低温障害の発生が糖エステル処理で抑制できることを確かめた。糖エステルの中,M-1695が最も効果があった。この処理で低温による呼吸の落ち込みも抑制できた。2.5℃で3日間低温処理した後20℃に移した緑動・黄動バナナの低温障害の発生も,糖エステル処理によって抑制された。官能検査の結果,M-1695処理が最も〓れた。3.1℃で15〜17日間低温貯蔵したナスとピーマンの低温障害の発生もD-1695,M-1695の糖エステル処理によって有意に軽減できた。4.ナス,ピーマン,トマトの組織あるいは組織から誘導したカルスの低温処理による呼吸の低下を,L-1695,M-1695,P-1695の糖エステル処理によって抑制できた。5.ナスのカルスを低温処理(1℃-4日間)すると,カルスから分離したミトコンドリアの呼吸調節機能が失なわれ,25℃に戻しても,この桟能は回復しなかったが,あらかじめL-1695で処理したカルスでは,25℃に昇温後ミトコンドリアの呼吸調節桟能が回復した。 以上のように果実,野菜の低温貯蔵・流通中の低温障害の防除にショ糖脂肪酸処理の効果があること,この効果に果実,野菜の呼吸の仕組みが関与する可能性があることも明らかにした。
|