研究概要 |
報告者は,キュウリモザイクウィルス(CMV)に罹病したトウガラシ品種`Af-5´の株を1〜2年間栽培し続けるとCMV罹病症状のない枝が発生することを認めている。この無病徴側枝の発生は,品種によって異なり‘カリフォルニア・ワンダー'や‘ししとう'では認められない。 ‘Af-5'の無病徴側枝の生体内CMV濃度をエライザ法,接ぎ木法で調べた結果,生体内にはCMVは含まれていないことが明らかとなった。また,さし木後数年を経過した無病徴側枝のさし木株についてエライザ法でCMV濃度を測定した結果,生体内にCMVは検出されなかった。無病徴側枝の発生は,自動日長処理装置の利用により高温・長日条件で発生しやすいことが認められた。無病徴側枝のさし木株に,アブラムシによるCMV接種を行ったところCMVは検出されなかった。これらの結果から無病徴側枝はCMV抵抗性をもつことが明らかとなった。 マイクロマニュピレータによる無病徴側枝の葉茎の徴細組織の採取による検定でもCMVは検出されなかった。無病徴側枝のさし木株もCMV抵抗性があり,また無病徴側枝を台木として‘ししとう'などの罹病性品種を接ぎ木すると,罹病性品種の穂木にCMV抵抗性の発現が認められた。罹病性品種のさし穂を無病徴側枝の葉の抽出液で浸漬処理するとさし穂にCMV抵抗性が発現することが認められたが,この点についてはさらに実験を行う必要がある。つぎに,接ぎ木株の穂木(罹病性品種を穂木とし,‘Af-5'を台木)をさし木繁殖して,CMV接種後その罹病率を調べた。4回の実験で罹病率は0,0,50,30%となり穂木のさし木株の全てがCMV抵抗性を獲得 ることはなかった。無病徴側枝はTMVに対しては抵抗性をもっていなかった。
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