都市化と工業化の過程において不可避的に発生する生活環境の悪化を改善するために、人工的に大規模な樹林(環境林)の造成が行われることが多い。このような環境林では、一般に早期緑化と自然林を擬して雑多な異樹種を混交した超高密度の植栽が行われる。しかし、このような造成手法は必ずしも植物生態学的な検証を得たものではない。従って、このような造成林を長期にわたって健全に管理し、さらに自然林のように自発的な更新機構を定着させるためには、その密度特性ならびに更新特性についての知見の集積が不可欠であり、本研究はそのための基礎的検討を行った。 苗畑おいて、数種の緑化木の単種・異種混合を植栽密度を変え植栽したモデル林分を造成して密度効果と生残率を測定した。その結果、単種植栽区においては逆数密度効果が得られるが、異種混合区においては必ずしも明確な逆数密度効果はみられず、このことは樹種の組み合わせとも有意な関係がなかった。また、超高密度に植栽した区においても自然間引きはそれほど顕著には現れず、造成樹木群落においては3/2乗則が必ずしも適用できないことがわかった。さらに、生残木の形状は通常の形状と異なること、とくに常緑広葉樹は殆ど蔓状に近くなって生存することなど、これまで知られていなかった現象が起きることで確認できた。 更新機構については、植裁後10数年を経過した工場内樹林において、実生雅樹の樹種、分布、齢構成、直径・樹高成長と光環境。土壌環境について調査した。その結果、雅樹の定着・生残には種子生産の変動と地壌水分環境が主として関わり、成長には光環境が主要な要因となっていることが判明した。その他、鳥類による種子持ち込みも重要な更新契機となるが、種組成に片寄りが見られとこも明らかになった。
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