研究概要 |
イエバエ腹部とラット肝のミクロゾームによる^<14>C-ダイアジノン分解反応を指標に,一連のメチレンジオキシフェニル(MDP)化合物の阻害活性を比較し、昆虫のMFOだけを阻害し哺乳動物のMFOには影響を及ぼさない化合物を複数発見した。これらをダイアジノン、カーバリル、レスメトリンと組み合わせてイエバエに局所施用したところ、3,4-メチレンジオキシベンゼン-1-(2'-メトキシエトキシメチルエーテル)(化合物No.1)は、いずれの殺虫剤ともすぐれた殺虫力効果を示した。No.1の殺虫共力効果はモモアカアブラムシやコナガ幼虫に対しても発揮され、特にピレスロイド剤抵抗性系統の昆虫に対しては殺虫剤の効力を著しく回復した。No.1はd-レスメトリンと組み合わせた場合,ラットに対する急性経口毒性に全く影響しなかった。従ってNo.1はin vitro,in vivoいずれにおいても、望ましい選択性を有する化合物であると言える。選択性の機構については、ラット肝ミクロゾームを用いて得られる数種MDP化合物のType 1スペクトルを検討した結果、選択性を示したMDP化合物のKs値は選択性を示さなかったMDP化合物のKs値よりも著しく高かったことから、親和性の違いが選択性に関与していることが推察された。同様に、ラット肝ミクロゾームを用いて得られるType3スペクトルのλ_<427>とλ_<455>のピークについても、選択的MDP化合物は非選択的MDP化合物に比べて一般的に小さなピークしか示さなかった。このようなMDP化合物とチトクロムP450の複合体生成の親和性を、殺虫剤分解反応を触媒する特異的アイソザイムのレベルで検討するべく、ラット肝とイエバエ腹部から分離を試みたが、十分量を得るに到らなかった。
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