ビワがんしゅ病菌の85メガダルトン(Md)プラスミドが欠落すると保有株とは異なり、カルス様組織を伴わない病徴進展を示すようになる。そこで、85Mdプラスミドの機能に関連する知見を得るため、ビワ茎組織における保有株および欠落株の増殖能を比較するとともに、宿主組織および細菌の形態的変化を電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、保有株は接種10日後から増殖を続け、20日後にはカルス組織を伴う典型的な病徴を発現した。それに反し、欠落株の菌数は接種後から漸次減少し、40日後まで明瞭な病徴は認められなかった。なお、両菌株の培地中における増殖能には差は認められなかった。また、接種10日後の細胞間隙に観察された両菌株に形態的差異は認められなかった。しかし、接種20日から40日後の保有株は正常な形態を有し、隣接宿主細胞は変性あるいは壊死収縮していたが、欠落株は電子密度が高くなった不整形の菌体が多く観察されるようになり、隣接宿主細胞の壊死は認められなかった。以上のことから、85Mdプラスミドが欠落するとビワ組織中での増殖が阻害され、病徴進展に差が生じることが示唆された。更に、85Mdプラスミドの再導入実験を行うため、ブラスミドの選択標識として利用できる表現型の検出を試みたが検出できず、またTn5やTn7によるプラスミドの標識を試みたが、すべてクロモゾ-ムにのみ挿入されていた。次に、85Mdプラスミドを高電圧パルスを用いて欠落株に再導入を図り、保有株と欠落株のコロニ-の色に極めてわずかな差が認められることを利用して再導入菌株の検出を試みたが極めて困難であった。従って、現在85Mdプラスミドのクロ-ニングを試みており、クロ-ニングしたDNAを遺伝子導入装置を利用して欠落株に導入する予定である。
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