研究概要 |
高等植物への外来遺伝子導入法とその発現解析法を確立する目的で,オオムギ子葉鞘内表皮とマイクロインジェクション法を用いた。導入する遺伝子としては,オオムギには存在しないβーグルクロニダ-ゼ生産遺伝子とタバコモザイクウイルス外被タンパク質生産遺伝子を用いた。これらの遺伝子を子葉鞘表皮細胞に直接マイクロインジェクション法で注入し,転写されたmRNAおよびmRNAから翻訳されたタンパク質産物について,それぞれ標識RNAプロ-ブもしくは標識抗体を用いて検出した。これらのプロ-ブや抗体を細胞内に導入する場合にもマイクロインジェクション(プリッキング法)を使用した。これらの方法は,マイクロインジェクション法とin situハイブリダイゼ-ション法もしくはin situイムノアッセイ法を組合せたもので,特定部位の遺伝子発現検出法としては新規の方法といえる。本研究で得られた結果はすでに日本植物組織培養学会誌に原稿投稿中であり,本法の原理などについては植物細胞工学誌1992年4巻3号に掲載される予定である。一方,本法の病害防除への応用に関する試みとしては,上述のマイクロインジェクション法によってキチナ-ゼをうどんこ病菌感染オオムギ細胞に導入し,うどんこ病菌が効果的に分解されることを明らかにした。この結果については,Plant Cell Reports誌1991年10巻に掲載された。このような結果から,キチナ-ゼ遺伝子の高等植物への導入が,病害防除の有効な手法になりうることが示唆されたので,キチン分解性細菌からキチン分解酵素生産遺伝子を単離し,一部その塩基配列を決定した。今後は,この遺伝子の全塩基配列を決定するとともに,その遺伝子を種々の高等植物に導入し,実際の防除効果を検定する。
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