人工飼料に対する摂食性の改善を目的として、カイコの食性について特に一般に人工飼料の喰付きの悪いといわれた中国種の食性について検討するため、現在中国において農家で実際に飼育されている実用種の原種ならびにその交雑種を収集し、掃立時に桑葉粉末の含有量の異なる人工飼料を与えて掃立24時間後の毛振率を調べ、各品種の人工飼料適合性ならびに摂食性の良否について検討した。 供試飼料は桑葉粉末含量が5、10、15、20、25、30、40、50%の8種類、供試品種は中国種16種、26系統、日本種系品種16種、20系統、交雑種12種、15組合わせ、の44種、61系統、組合わせである。 その結果、概して交雑種の摂食性は原種より高く、桑葉粉末含量10%以上の区で毛振率が高い品種が多かった。一方、原種においては食性の範囲が広く、すべての飼料区で毛振個体がみられない、つまり人工飼料をほとんど摂食しないものや、桑葉粉末5%以上の区で毛振個体が多い人工飼料適合性の高いものがみられた。中国種と日本種系品種と比較すると、日本種は概ね飼料適合性が高い概向を示したのに対し、中国種は桑葉粉末30%以上の区でのみ毛振個体がみられる品種が多く、飼料適合性が低い傾向であった。しかしながら、中国種においても桑葉粉末5%以上の区で多くの個体が毛振いする、摂食の良好な品種もみられた。 現在中国においては人工飼料適合性を目標とした選抜育種が全く行われていないこと、同一の品種においても保存場所が異なる系統の間では飼料の食性に差異が認められること、飼料適合性の低い品種を母体とした交雑種でも適合性の高いものがみられること、の3点から、一般的に飼料適合性が低いといわれる中国種を素材として飼料適合性の高い品種を育成することはさほど困難とは思われない。
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